【書籍】システムの問題地図

沢渡あまねさん著「システムの問題地図」を読みましたので内容を紹介します。

著者の沢渡さんはベンダー、ユーザ企業いずれでも勤務経験があり、ITシステムを選定/使う/作る/運用する立場を経験されています。様々な立場からITシステムへ関与した経験を通じて著者が感じた問題点とその理由が説明されています。
私自身もベンダとしてシステムの提案〜運用まで経験があるので、かなり同意できる部分が多かったです。
色々な問題に言及されているのですが、中でも特に以下のような点が重要視されています。
 ①関係各位は最低限“共通言語“を学習すること
  ITILPMBOKRFPの書き方、ITの基礎知識程度はベンダ/ユーザ問わずに身につけておかないとチームとしても個人としても明るい未来はありません。
 ②コストありきでのシステム導入は避けること
  システムを導入する目的は「お金をかけないこと」ではなくどれだけ利用者に付加価値を提供できるか。不用意にコストカットを目指すと、品質の低下や対応の遅延につながるため必要なコストはかけるようにしましょう。
 ③導入フェーズへ運用担当をアサインすること
  既存システムの利用や問題を熟知している運用者の知見を活かすことで、システムの品質が大きく向上できます。また、前もって運用引き継ぎの準備を進められるので、負荷平準化やマニュアルの抜け漏れ防止も期待できます。

良かった点

  1. ITシステム導入において発生しがちな問題が列挙・言語化されているため、読者の組織分析に役立てやすいと考えています。
  2. ベンダ/ユーザ双方の視点が1冊で知れます。相手の考えを知ることは円滑なコミュニケーションにつながると思います。相手が働きやすくなれば、レスポンスが速くなったり本音で話せたり自分のためにも。情けは人のためならずですね。

注意点

  1. 本書の特性上、システム改善の即効薬ではないです。既存システムの直し方というより、今後改修/新規導入する際に発生する問題への対応に視点を置いています。
  2. 規模が大きめなチームでは役立てづらいかも。例えば、コスト重視の相見積もりを辞退したいと考えた場合、小さな規模の組織であれば考えをメンバに訴求しやすいですが、大企業ともなると時には数千名近い規模のトップの考え方まで変えてもらう必要があるので難易度が跳ね上がると思います。

チームでブレスト/議論するための叩き台にはうってつけの書籍だと感じました。
ここで記載した以外にも問題点やちょっとしたノウハウが書かれていますので、本書に興味を持っていただいた方は以下からご参照ください!